子供の将来には無限の危険性も (1988年)

子供の未来に夢を託して

 子供時代は、人生でも最も重要な人格形成期と言われております。どこのご家庭でも、子供さんの将来には明るい未来があり、夢を託したいものです。

しかし、現実は毎日の新聞やテレビで、青少年犯罪の恐ろしいニュースが報道されています。夢を託したわが子が、途中で何かの原因で狂ってしまうこともあるのです。

どこのご両親も、そういう子供を育てるつもりは、全く無いのですが、子供の未来には無限の可能性と裏腹に、無限の失敗の可能性も、たくさんあるのだと言うことを、肝に銘じておくべきです。

話は極端になってしまいましたが、子供の人生は生まれ備わった天性、運、努力、育った環境等で大きく左右されます。

教育の原点は家庭教育にあり

育った環境の中でも、最も大きく影響を受けるのは家庭教育であり、両親です。

そこで、今回は幼稚園の保育と、車の両輪の関係にある家庭の教育について、考えて見たいと思います。

毎日、子供は親を見て育って行きます。子は親の鏡とも言われます。

社会生活の基本を教えるのは家庭であり、家庭で教えなければ誰も教えてはくれません。

学校の先生をあてにしても、限られた時間では限界です。家庭の生活を通しての教育は、子供の将来を左右する、大切な役割を担っております。

親が家庭で教育をしなかったら、子供に「悪」を教えているようなものです。

社会の常識にうとく、深夜の町中をバイクの轟音を立てて走り回ったり、中には親を殺すようになったり、言語に絶する最大の「悪」となります。

親教えざれば愚かとなり、さらに親子の断絶は凶悪をも誘引しかねません。

家庭教育の環境は並々悪化しつつある

最近は女性の社会進出に伴い、子供を家庭でじっくり見てあげられる人が、少なくなってしまいました。

老人パワーも核家族化で期待出来ない。また、お父さんは夜遅く帰り、子供と顔を会わす時間が余り無い。単身赴任で滅多に家に帰れない人も多い。頼みとする父親の教育がこれではここ今もとない。

一方、物は豊富にあり余っているため、物の大切さを教えようとしても難しい。

物の無い時代には、アイデアで色々の代用品を作り出していた。それが大きく教育の役割りを果していたと思います。

また、文明の発達する裏には大人の幼児化が進むと言われています。

すなわち、家庭教育に全く関心のない人も現れてきます。そのように、家庭教育をしにくくする環境が多くなってきました。

家庭教育のないがしろのつけは大きい

躾のような事は、小さいときの教育は容易ですが、大きくなればなるほど難しい。

子供が大きくなって、社会に迷惑を及ぼすようになってから、教育の必要性を騒いでも後の祭です。

このようにして、家庭教育をないがしろにした場合、愚かな子供はやがて愚かな親に育ってゆき、さらに愚かな子供を産み、家庭教育の出来ない子孫を作り、次の代へと問題を増幅し、不良品の拡大再生産を行うことになります。

そのつけは、子供の未来に無限の失敗の可能性、無限の危険性をもたらし、子孫にマイナスの遺産を代々残す事になるのです。

私ども幼稚園では子供さん達の将来のため、特に集団の中でのルールを身につけるよう指導しております。また、家庭教育面でのアドバイザーとしてもお役に立ちたいと思っております。

 

参考賃料:産経新聞63/8.29.朝刊、正論「恐ろしいのは負の遺産」

バックナンバー
創刊号 カオル幼稚園はこのように考える。(1979年)
2 カオル幼稚園はこのように考える。(1980年)
3 躾について (1981年)
5 21世紀を担う子供たちに明るい社会を (1983年)
9 この10年を顧みて (1987年)
10 子供の将来には無限の危険性も (1988年)
11 家庭での子供達の生活空間を考える (1989年)
12 玩具あれこれ (1990年)
13 子供の食習慣と栄養 (1991年)
15 子供達の自主性を育てよう (1993年)
16 やり直しがきかない子育て (1994年)
17 感性をはぐくむ (1995年)
18 遊びについて (1996年)
19 自然に遊ぶ、大地に学ぶ (1997年)
20 父親に期待される子育て (1998年)
21 女性の社会進出と子育て支援 (1999年)
22 思いやりの心を育む (2000年)
23 これからのエリート教育 (2001年)
24 子育て環境は8歳までが勝負 (2002年)
25 メディア漬けから子供たちを守ろう (2003年)
26 これからの子育て支援 (2004年)
27 ことばの教育 (2005年)
28 食育について考える (2006年)
29 真っ当な人間に育てる (2007年)
30 創立30周年にあたって (2008年)
31 「自然」は最良の教師 (2009年)
32 本を読む習慣を付けよう (2010年)
33 群れ遊びについて考える (2011年)
34 こどもには沢山の体験を (2012年)
35 美徳を取り戻そう (2013年)
36 国際化とこども教育 (2014年)
37 子ども・子育て新制度を考える (2015年)
38 リーダーを育てる (2016年)
39 データから見た幼児教育の重要性 (2017年)
40 人工知能時代を生き抜くこども達 (2018年)
41 これから世界的に活躍出来る人に (2019年)
42 カオル幼保グループの考え方 (2020年)
43 緊急事態宣言下に考える (2021年)