やり直しがきかない子育て (1994年)
今、学校で、それがやがて社会で
これまで日本の子供達は偏差値だ、良い学校へ等と競争に煽り立てられてきました。
その中で着実に癌のように大きくなって来たのが、子供達の不登校(いわゆる登校拒否)・自立不十分・非行・暴力(校内・家庭内など)等の問題です。
大抵の場合、本人は勿論のこと、その家庭も学校の先生も悩み苦しみ続けてきているのです。そして、その出口はまったく見当らないのが現状です。
現在、年間50日以上休んでいる子供達は約6万人いるそうですが、表面に現れない者を含めるると、この何倍いるのか計リ知れない状態です。
しかも年々増え続けており、学校だけでなく目を社会に向ければ、青年期を迎えてやはリ解決の糸口さえ見出せない若者が急増しているのも事実です。
幼児教育との関わリ
私ども幼児教育に携わる者として、この種の問題に何故関わるのかとの疑問に答えねばならないのです。多くの医師や研究者のお話を聴いていると幼児期の育った家庭や環境にかなリ関係が深いらしい。
さらにこの種の問題は、子供達が小学高学年、中学、高校生と大きくなって表面化するために、幼児期の対応がまずかったと、後から気付いても、余リにも遅過ぎて手直しが効かないし、解決の方法さえ判らないところに根が深いのです。
そこで、現在子育て中のご家庭や、これから子育てをしようとしているご家庭と、共に考え、情報収集や情報交換を行うことによリ、少しでも子育てに熱心な皆様にお役に立てるのではないかと考えております。
お子さんが大きくなってから気づいても、時既に遅しです。また、そうならないためにも。
幼児期は人格形成の大切な時
この種の専門の先生のお話では、間題の約半分は育った家庭が原因し、特に幼児期における親の不在傾向や家庭内のトラブルなどによるものらしい。
親の不在傾向は親子のスキンシップ不足に繋がります 。又、最近の離婚の急増や家庭内のトラブルなどは子供への悪影響が計リ知れないようです。
さらに核家族化がもたらす弊害としては伝統的な子育てが排除され、もっぱら合理化されたり、あるいは商品化された物に頼リ過ぎてしまうため、母子の信頼感が損なわれてしまうようです。
人格形成の発達課題は、信頼感、自立感、活動性、自発性などの醸成、さらに自己確立へとステップを踏んで展開されるそうですが、その順序を崩すと達成が難しく、又、年令に見合ったタイミングがあって、3才の時に身につけるべきものを、10才になってから補おうとしても無理だそうです。
人格形成は一度、どこかで大きなつまづきを生ずると、後からの修正や追加が出来ないといわれています。つまり、やリ直しがきかないということです。
この問題は幼児を持つ家庭についての女性の社会進出、仕事中心の男性社会、核家族化などへの警鐘とも受けとめられます。
参照資料: 坂本昇一著「登校拒否のサインと心の居場所」小学館発行