遊びについて (1996年)
子供の群れ遊びが少ない
最近は子どもの数がどんどん少なくなって、大人の管理が行き届きすぎている。
一昔前のように、一家に子供が5人も6人もいると親はそうそう管理しておれないから家の手伝いをさせたりしながら、遊びから帰ってきたら食べさせて、風呂へ人れ、寝かせる程度の管理だった。
子どもはお日様が出てくれば遊ぶことしか考えていなかった。あちこちに多くの子どもがいっぱいいて、がき大将、泣き虫、わんぱくなどなど。
そこには自然と子どもながら大勢の中へ入ってゆく術を心得えて、群を成して遊んでいた。いまは一人っ子か二人っ子で、学習塾だ、ピアノの稽古だ、……というふうに、朝から晩まで細かく管理され、大人が思うように引っ張りまわすことに、全精力を使っている。
子供の遊びを潰していませんか
子どもにとっていちばん大事なのは、自分の世界を持っていることで、これはどんな形で出てくるのかというと、遊びを通じてである。
遊ばない子どもというのは、人間味がそなわって来ない。何故かというと人間は遊びのなかで、誰からも強制されない自分の世界を持つことができる。
子どもは自分の意志で遊んでいるし、その中で、誰からも命令を受けない。そこから、創意工夫、自分のやりたいことが次々と出て来る。それがないということは自立することもできない。
自分のやりたいことを楽しくやるということがなかったら自分の能力を伸ぱすこともできない。そこには枠に嵌まった小さな人間しか生まれて来ない。とても大勢の組織化された社会の中に上手に入って行ける積極人間にはなれまい。
よく言われるように、子供のとき、どうしょうもないがき大将やわんばくが大きくなって立派にやっている話、又、その逆に子供のときお利口だったかという話等よくある。
幼児の生活の中心は遊ぴであり、遊びは幼児期の重要な学習である。遊びの中で、様々なことに気付き、友達とのかかわりを体験し生活にたくましさを増し、ときには、遊びの中で、葛藤や挫折感を味あうこともある。
遊びを中心とした生活の中にこそ、一人一人の幼児が、人間性を育み人格を形勢する基礎となる大切なものが存卒すると考える。つまり、生涯の基本となる「他人とのかかわり合い」を子供のとき、遊びを通じて体験しているわけである。
この学習の時期が大事なのだそうである。この時期を逃すと一生涯それがうまく行かないケースも多いと言われている。
私どもの取り組み
私達はこのような幼児の遊びを見据えた、押しきせでない、幼児が自分から取り組み、進んで遊びを生み出し、発展させて行くような教育環境をつくることが最も重要であると考え実践しております。
子どもたちの良さや持ち味を生かし、幼児本来の姿を取り戻すこと、子どもらしさの復権のためには「群れ遊び』の再生こそが大切であると考え、諸先生の御指導のもと取り組んでおります。
「遊びをせんとや生れけむ戯れせんとや生れけむ、遊ぶ子どもの声聞けばわが身さえこそ揺るがるれ」(梁塵秘抄)
参照資料: 松田道雄(小児科医)「自由を子どもに」