父親に期待される子育て (1998年)

子供たちの解決課題は大人社会の反映

いま、子供たちの教育については多くの場で議論され、家庭や学校で多くの悩みを持っていることは周知の通りである。

日本の家庭では親が子供と一緒に過ごせる時間が極めて少なく、家庭での親の影響力は希薄になりつつある。特に父親の子育てに係わる時間が少ない。子供たちの周囲は家庭にありながら、テレビ、雑誌などたくさんのチャンネルから良悪関係なく情報が押し寄せて来る。

最近は、インターネット等のように簡単にしかも好ましくない情報でも洪水のごとく押し寄せる。大人社会の影響力があまりにも大き過ぎるため、本来、子供たちには家庭の教育力が大きいにもかかわらず、それを発揮できないでいる。もう一度家庭の教育力を大きくして見よう。

子供たちとの触れ合いが少ない父親

 国際比較で日本の父親の家庭における子供たちとの係わりの時間は極めて少ない。アメリカやイギリスでは父親の一日の子供たちとの触れ合いの平均時間は4.7時間。これに対し、日本の父親は3.3時間で1.4時間も少ない。

一方、母親はアメリカやイギリスの7.5時間と殆ど同じである。日本の母親は子供の教育に孤軍奮闘している様子がこの数字から伺える。つまり、家庭内での教育のパターンが母親主導になっている。 

触れ合いを阻害する要因

子供たちは学校から帰ると塾や稽古ごとなどで余裕が少なく、遊びの場に子供たちの姿が少ない。親が子供たちに声を掛けようとしてもなかなか見つからないなど、家族と接している時間が極めて少ない。

また、私達の環境はビジネスや大人社会の交際などに多くの時間が割かれてしまう。さらに、最近の住宅は年々立派にはなるが逆に家族間のコミュニケーションを難しくさせていないか懸念される。

父親の子供たちとの触れ合いの時間を少なくしている要因には通勤距離が長い、勤務時間が長いなどにより帰リが遅いなどの日本的な理由もあろう。

幼児期こそ家庭の教育力の効果大

子供たちは家庭のほか、学校、地域社会などで学習や遊びを通じて毎日成長して行くがその中でも家庭の教育力の効果は大きい。

そこで、これから私達が特に自分たちの努力で容易に実現できそうなものとして家庭の教育力に期待が掛けられている。

家庭では特に父親が子供たちの教育に積極的に取り組み、出来るだけ家族が顔をそろえる機会を設け、家族同士の会話を増やし、その内容を豊かにし、躾、善悪のルールやものの考え方、自ら考え創意工夫をしつつ解決することなどを教え、かつ、子供にも家庭内の役割を与えたりして、家族のみんながお互いに協力し合って、楽しく過ごせる明るい円満な家庭をつくることが望まれる。

 

参照資料:文部省発行「幼児期からの心の教育の在り方について」

バックナンバー
創刊号 カオル幼稚園はこのように考える。(1979年)
2 カオル幼稚園はこのように考える。(1980年)
3 躾について (1981年)
5 21世紀を担う子供たちに明るい社会を (1983年)
9 この10年を顧みて (1987年)
10 子供の将来には無限の危険性も (1988年)
11 家庭での子供達の生活空間を考える (1989年)
12 玩具あれこれ (1990年)
13 子供の食習慣と栄養 (1991年)
15 子供達の自主性を育てよう (1993年)
16 やり直しがきかない子育て (1994年)
17 感性をはぐくむ (1995年)
18 遊びについて (1996年)
19 自然に遊ぶ、大地に学ぶ (1997年)
20 父親に期待される子育て (1998年)
21 女性の社会進出と子育て支援 (1999年)
22 思いやりの心を育む (2000年)
23 これからのエリート教育 (2001年)
24 子育て環境は8歳までが勝負 (2002年)
25 メディア漬けから子供たちを守ろう (2003年)
26 これからの子育て支援 (2004年)
27 ことばの教育 (2005年)
28 食育について考える (2006年)
29 真っ当な人間に育てる (2007年)
30 創立30周年にあたって (2008年)
31 「自然」は最良の教師 (2009年)
32 本を読む習慣を付けよう (2010年)
33 群れ遊びについて考える (2011年)
34 こどもには沢山の体験を (2012年)
35 美徳を取り戻そう (2013年)
36 国際化とこども教育 (2014年)
37 子ども・子育て新制度を考える (2015年)
38 リーダーを育てる (2016年)
39 データから見た幼児教育の重要性 (2017年)
40 人工知能時代を生き抜くこども達 (2018年)
41 これから世界的に活躍出来る人に (2019年)
42 カオル幼保グループの考え方 (2020年)
43 緊急事態宣言下に考える (2021年)